遠くに連なる山々に囲まれ、穏やかな日差しがふりそそぐ豊かな大地がラ・フランスのふるさとです。
その名前の通り出身はフランス。ですが、現在はフランスではなく日本で多く栽培され、中でも7割は山形県でつくられています。
ラ・フランスがおいしく育つのは寒暖差があり、湿潤で寒冷な気候、肥沃な土壌のところ。
そんな条件に適した山形県の盆地で栽培が定着し、今ではさくらんぼとともに県を代表する果物になっています。

農園でたわわに実ったみごとなラ・フランスを前に、生産者のおひとりであり、東根市農協果樹共選運営委員会・なし共選委員長の高橋健治さんに、おいしく育てる工夫を伺いました。
「実をつきやすくするためには、まず日当たりをよくすることと、風通しをよくすることが基本。また、放っておくとひとつの枝に７つぐらいの花芽がついてしまうので、春先にいかに早く摘花して１つにし、1本の木を適量に調整できるかがポイントです。それによって養分が1つの花に行き渡り、ラ・フランス特有のなめらかな食感も生まれます」
おいしい実を狙って侵入するサルやイノシシを防ぐために、農園にはフェンスがはりめぐらされています。といっても、いちばんの敵は台風。毎年9月から10月初めまでは気が抜けないそうです。今年は数々の台風に襲われ、特に山形を直撃した台風のときは覚悟していましたが、幸運なことに被害は少なかったとのこと。
「風よけに支柱を立てて、あとは祈るだけ。みんなで祈っていました」という言葉に生産者さん達の切実な想いを感じます。

「もうひとつ大切なのは、いい葉っぱづくりをすることです。いい花芽のためには、なにより葉っぱが大事。春先にいい花芽がつくように樹を剪定して、ひとつの花芽に集中させています。そのために、冬は雪の中での剪定作業が不可欠です」
こうして手間をかけ、丹精込めて育てたあとの収穫は、生産者さん達にとって至福のとき。実の部分に硬度計を刺して熟度を確認し、ヨードカリ反応というでんぷん質がどれだけ抜けたかという状態を調べて収穫します。でんぷん質が抜けることで糖分に変わるので、充分に抜けていないと、ざらざらな食感になり、ラ・フランスの特性である洗練された舌触りが生まれません。

そして、栽培と同じぐらい重要なのが「追熟」です。
収穫されたラ・フランスはすぐに倉庫の冷蔵庫に運ばれ、１週間以上予冷されます。これは収穫時にばらつきのあったそれぞれの実の熟度を、均一にするための大事な工程です。
冷蔵庫から出してさらに常温で1週間ほど追熟されると、香りとなめらかさは一層高まり、出荷へと進みます。

ラ・フランスは軸がしおれて軸の周りにしわが寄ったときがおいしさのタイミング。
最後はデニーズ独自の熟度管理を行い、最適な食べごろを見定めてお店へと出荷されます。
厳しい審査を受けた最適な状態のものだけをお店に運ぶため、配送には細心の注意が払われます。揺れても傷がつかないようふわふわの梱包材に包み、ハンモックのような状態にして大切に届くシステムです。

ラ・フランスが日本にやってきた1900年ごろは、見た目はでこぼこで色も地味な緑色のことから「みだぐなす」（山形弁で見栄えが悪く、格好悪いの意味）と言われ、敬遠されていました。
長年受粉樹として育てられていたのですが、ある日農家の人が木から落ちていた実を食べたところ、あまりのおいしさに驚いたとのこと。つまり、熟しきったときがラ・フランスの食べごろだという事実に初めて気づいたのでした。
実に100年近くという不遇な時代を経て、積極的に栽培され始めたラ・フランスは、あっという間に「洋梨の女王」とまで呼ばれる人気を確立します。上品な香りと精緻な肉質、濃厚でとろけるような食感から、最近では〝バターペア″と呼ばれるほど。果物王国である山形の方からも「きちんと熟したおいしいラ・フランスほど感動する果物はない」という声が上がるほど。フルーツの中でもトップクラスの味といっていいでしょう。
生産者、倉庫での管理、流通と各分野でその都度大事に手をかけられて最高の状態でデニーズのお店に届くラ・フランス。
旬の今、香り高い果汁、メルティな肉質のラ・フランスをぜひ味わってみませんか。